コード検出とコードトラック

Melodyneはレコーディング内容に含まれるコードを識別してキー(調性)の変化を検出することができます。Melodyneのコードとキートラックについて必要な情報はすべてこちらからご覧いただけます。

すべてのMelodyneインスタンスに対して1つのコードトラック

コードトラックは、開かれているMelodyneの全インスタンス、つまり各トラックに表示されます。そのため、各インストゥルメントにより演奏されるメロディラインやコードが異なっていても、すべてのインストゥルメントに対して同じコードが表示されます。

つまり、コードトラックに表示されているのは、すべてのインストゥルメントを組み合わせた効果、ソングまた楽曲_全体_の倍音構造です。これを頭に入れた上で、任意のインストゥルメントによって任意のタイミングで演奏されたノートを分析し、ハーモニー全体との調和を確認することができます。

倍音分析をトリガーする

Melodyneにコードを識別させるには、以下の手順で行います。

  • ポリフォニック楽器(ピアノ、ギターなど)のレコーディング内容を開きます。Melodyne studioでは、ノートエディター内に複数のトラックを同時に開くことができ(ギターとベースなど)、倍音分析にすべてを含めることができます。
  • [オプション]メニューの関連エントリをチェックしてコードトラック(とキートラック)を表示します。または、ノートエディターの右上隅の[タイムグリッド設定]メニュー下のアイコンをクリックします。

  • コードトラックを右クリックして、コンテキストメニューから[コードを分析]を選択します。レコーディング内容の「リードシート」が表示されます。

注:コード検出機能が正しく機能するためには、検出されたテンポが正しいものである必要があります。正しくなければ、コード記号が誤った拍に合わせられます。このため、コード分析の前に[テンポ]ダイアログで[プロジェクトテンポをファイルに適用]を選択しておきます。

[コードを分析]コマンドはいつでも繰り返して分析を更新できます。
たとえば、異なるコードを含む新しいギターパートを録音した後などに行うとよいでしょう。

  • 特定のコードだけを再分析する必要がある場合、該当するコードをコードトラックで選択してから[コードを分析]を選択します。
  • 2つ以上のコードを選択するには、ShiftキーとCmdキーを使用します。
  • あるキーをクリックしてからCmd+Aを押すとすべてのコードが選択されます。

注:コード分析は常に、コードトラックで選択されているエリア内のノート全てに基づきます。個々のblobを選択したり選択を解除したりすることで分析に影響を与えることはできません。その動作は音楽的観点からも意味を成しません。なぜなら、考慮される情報が少なくなるほど、表示されるコードがレコーディング内容を反映する精度は下がるからです。

ただし、ミックス全体のコードを分析しようとする場合など、特定のblob(キックドラムやシンバルに起因するもの)が混乱を招くケースもあります。このような場合の解決法は、オーディオファイルを新規トラックにコピーし、問題のblobを削除し、このトラックのみをベースに新たにコード分析を実行することです。

別の記号を選択する

コードトラックを右クリックしてコンテキストメニューを開くと、検出されたコードに対する他の選択肢が表示されます。

注意しておきたいのは、ここで表示される選択肢は「このコードも演奏できますよ」ということを勧めるものでは_ない_ということです。選択肢はオーディオ素材の別の解釈に過ぎません。

たとえば、C、E、G、Aから構成されるコードは、C6またはAm7として解釈されます。どちらも正しい解釈ですが、どれが最もふさわしいのかは、どのノートがどれくらい強調されているのかによります。たとえば、最高音が強くクリアなのか、それともほとんど聞こえない程度なのかといったことです。最も適切な解釈は、該当のパッセージの周辺のコードや、パッセージにおいて支配的なキーにも依存します。これらは内容にもよりますが、どちらをとるのかは、ユーザーのテイストと自由に委ねられています。そのため、Melodyneはあり得るすべての解釈を提示し、ユーザーに選択の余地を提供します。

もちろん、極めてベーシックなコードの場合、選択肢は少なくなり、場合によっては1つだけのこともあります。たとえば、コードがC、E、Gの3音で構成されている場合、Cメジャーと考えるのが普通です。

コードを手動で入力する

コード検出の結果に関係なく、コード名やコード記号をタイプ入力することで、コードトラックに手動で入力することができます。
これを行うには、既存のコードを選択し(フレームが表示され、選択されているコードがハイライト表示されます)、テキストを通常どおりタイプ入力します。

コードトラックのうち、コード記号が表示されていないエリアでは、適切な位置をダブルクリックしてタイプ入力することでコード記号を入力できます。

Melodyneでは標準的なコード表記すべてを使用できます。
たとえばFマイナーは、「Fminor」、「Fmin」、「Fm」、「F-」と入力できます(「F」は大文字でも小文字でもOKです)。デフォルトでは、Melodyneは設定されている言語を選択します。

カーソルをコード間の境界(カーソルの形が変わるところ)へと動かしてからダブルクリックすることで、特定のコード変更を削除することができます。

逆に、既存のコードをダブルクリックすることでコード変更を追加することもできます。デフォルトでは、コードを挿入または移動すると、グリッド上の直近の4分音符にスナップします。Altキーを押したま操作すると、グリッドの解像度を一時的に上げることができ、8分音符または16分音符にスナップさせることができます。

コードトラックを右クリックすると表示されるコンテキストメニューで、新しいコード変更を取り入れる際に新たに作成したコードの新規分析を実行するかどうかを選択できます。

コード編集のキーボードショートカット

次のショートカットは、ノートエディターでのblobの選択と編集に使用されているものと同じで、表示されるコードをより迅速に入力、編集できます。必要に応じて、[環境設定]ダイアログでショートカットアサインを変更できます。

  • Shift-クリックとCmd-クリック:コード選択を拡張
  • 左/右矢印:前/次のコードを選択
  • Shift+左/右矢印:選択を拡張して前/次のコードを含める
  • 上/下矢印:別の選択肢間で切り替え(上記参照)
  • Cmd+上/下矢印:コードを全音階で(現在の音階の音だけを使用して)上下にずらします。キーに合うよう、長音程が必要に応じて短音程と入れ替えます。たとえば、キーがAマイナーで、選択されているコードがCメジャーだとします。Cmd+上矢印を押すと、これは(AマイナーのキーにはないDメジャーではなく)Dマイナーになります。一方で、キーがEマイナーの場合、Cメジャーを選択してCmd+上矢印するとDメジャーが生成されます。この場合、コードのクオリティ(三和音の種類)は変わりません。
  • Shift+Cmd+上/下矢印:コードを上方向に半音階でトランスポーズします。つまり、CメジャーはC#メジャー、Dメジャー、D#メジャーとなります。コードのクオリティは変わらず、メジャーのコードはメジャーのまま、マイナーのコードはマイナーのままになります。

この方法でコードトラックを編集すると、録音された音楽は(はじめは)変更されません。ただし、コードトラックになされたこのような変更は、ノートを編集する際にピッチグリッドに[コード]または[コードスケール]を選択する場合に違いをもたらします。

コードを試聴

コードトラックを右クリックしてコンテキストメニューを開くと、コードを試聴するオプションが表示されます。

このオプションが有効な場合、矢印キーでコードを順に選択したり、テキスト入力やキーボードショートカットで変更したりする際に、該当のコードがギターのようなサウンドで演奏されて聞こえます。

コード表記オプション

Melodyneの[環境設定]ダイアログでは、コードトラックで使用されるコード表記を選択できます。表記には一般的にさまざまなものが使用されており、Melodyneではそれらすべてが認識されます。たとえばCマイナーは、「Cm」と表記する人もいれば、「C-」や「c-」と表記する人もいます。

ディスプレイに特定のフォーマット(例:c-)を選択した場合も、データの入力に別の表記(Cm)を使用してもかまいません。MelodyneによりCmがc-に変換されます。これは、入力が難しい特殊文字を含む表記を選択した場合に特に便利です。[環境設定]ダイアログで、たとえばFメジャー7が「F∆7」と表示されるよう指定しても、コードトラックでコードを入力する際はより入力が簡単なフォーマットを使用する(「F maj7」など)ことができます。

ディスプレイ用の命名規則同様、コードの複雑性にも影響を与えることができます。特定の音楽ジャンルに対しては、リードシートを読みやすくできると便利です。コードトラックを右クリックしてコンテキストメニューを開くと、以下の選択肢が表示されます。

分数コード
たとえばギタリストがCメジャーを演奏しているのに、ベースで鳴っている音がCではなくGの場合、これがコードを変更することはない(GはCメジャーにあるため)にしろ、記譜の際にこの事実を考慮することは重要だと考えるかもしれません。その場合、分数コード(C/G:CメジャーでベースにG)を使用します。
このオプションにチェックを入れると、この規則がトラック全体で使用されます。

拡張コード
このオプションにチェックマークを入れると、Melodyneは拡張コード(ジャズで一般的)を探します。このオプションをクリアすると、よりシンプルな記述が選択されます。たとえば、該当のコードがCメジャーで、同時にDが鳴っているとします。DはCメジャーコードのナインスですので、コードの正確な表記は「Cadd9」になります。ただし、この場合、リードシートには単に「Cメジャー」と書いても全く問題ありません。こうしても、音楽自体には何の影響も与えません。このオプションにチェックを入れるかどうかが影響があるのは、後でノートを編集する方法によります。(コードのノートの編集については次のツアーで説明しています。)

サード抑制
Melodyneはコード検知の過程でコードが演奏されていなくてもサードを追加します。この動作は通常は有用です。ただし、たとえばブルースの場合、ミュージシャンはわざとサードを省くことがよくありますが、そういった場合はサードの追加は好ましくありません。このオプションにチェックマークを入れると、追加されたサードが非表示になります。ただし、実際に追加されたサードには影響せず、常に表示されます。サードがない場合、このオプションは灰色表示になります。

コードをリードシートとしてMIDIエクスポートする

[エクスポート]ダイアログで[リードシート]オプションを選択すると、ソングのコードシーケンスがMIDIノートの形で表示されているMIDIファイルを保存することができます。

一般的な用途は次のとおりです。コードを記譜プログラムに転送する、または、MIDIファイルをご使用のDAWにロードしてシンセ/サンプラートラックを加える土台として使用する。

キートラックとキー変更

キートラックの編集方法は、コードトラックでの説明とほぼ同じです。
唯一の違いは、右クリックすると表示されるコンテキストメニュー項目が少ないことです。

  • 上半分では検出されたキーに対する代替選択肢が表示されます。
  • キーを分析:キーの再検出が実行されます。
  • 教会旋法:教会旋法(ドリアン、フリジアンなど)を使用します。
  • 音階を開く:別ウィンドウが開き、キーを選択できます。
  • スライス後に新規分析を実行:キートラックをダブルクリックすると、既存のセグメントを2つにスライスしたり、2つのセグメントを合体させたりできます。その際、セグメントのキーの新分析を自動で実行するかどうかを、このオプションで決定します。

キートラックと音階ルーラー

音階ルーラー(ノートエディターの左端)には常にキーが表示されますが、このキーには多数のバリエーションが存在し得ます。ソングにキー変更が含まれている場合、どの音階が表示されるのかは再生位置により異なります。

ノートアサインメントモードのコードとキー

ノートアサインメントモードでは、ソング全体に対して共通する1つのコードトラック(通常の編集モードの場合)ではなく、現在検討中の楽器により演奏されたコードのみ表示されます。

ノートアサインメントモードでは、アクティベーションツールを使用してblobに変更を加えてから新規分析を実行すると、コードが変化することがあります。

そのため、ソング全体に関連する「プロジェクトコード」の場合と、ノートアサインメントモードでのみ表示され、該当する楽器にのみ関連する「ファイルコード」の場合があります。[編集]メニューには、ファイルコードをプロジェクトコードを置き換えることができるコマンドがあります。

これはキーでも同じです。ソングには共通のキートラック(プロジェクトスケール)がありますが、ノートアサインメントモードには現在の「ファイルスケール」が表示されます。