アルゴリズムインスペクター
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Tweaking algorithms– ダイヤルを使用して難しい素材に合わせてアルゴリズムを調整。Melodyne 5 studioの場合。別エディションでは異なることがあります。日本語字幕。
ノートアサインモードのアルゴリズムインスペクターは、編集されるオーディオ素材に合わせて選択されているアルゴリズムの動作を調整および最適化できる複数のオプションを提供します。
ノートアサインメントモードが有効な場合、アルゴリズムインスペクターが情報パネルに表示されます。
アルゴリズム: 一番上のポップアップボタンに現在のアルゴリズムが表示されます。メニューが表示された状態であれば、リストから別のアルゴリズムを選択できます。選択すると、新規分析が実行されます。警告:アルゴリズムを切り替えると、それ以前にオーディオソースになされた編集はすべて失われます。そのため、最適なアルゴリズムが選択されているかを確認すること、また最適なアルゴリズムが選択されていない場合、分析の修正やノートの編集を行う_前_に適切なアルゴリズムを選択することを習慣にしてください。
プレビューパラメーター
プレビューセクションには、検出の編集とアルゴリズムパラメーターの微調整をアシストする以下のような重要なオプションがあります。
シンセ: ノートアサインメントモードでの目的は、表示されているノートが実際に演奏されたノートと一致しているかどうかを確認することです。しかし、ノートアサインメントモードでは編集しようとしているオーディオファイルのオリジナルのサウンドが聞こえ、blobの編集には可聴の影響はないため、検出結果の確認は視覚に頼るしかありません。モニタリングシンセが活躍するのはこのような場合です。シンセトーンジェネレーターを使用して、モニタリングシンセはblobを表示されているとおりに再生します。これにより、目と耳で確認できるようになります。シンセのオンとオフは、「Z」アイコンをクリックして切り替えられます。ボリュームをコントロールするには、上下にドラッグします。
モニタリングシンセは、アルゴリズムに[パーカッシブ]または[ユニバーサル]が選択されている場合には使用できません。
テンポ、ピッチ、フォルマント: これら3つのプレビューコントロールでは、これらのパラメーターに加えられた変更をシミュレートし、現在のアルゴリズム設定への効果を確認できます。たとえば、アルゴリズムインスペクターでフォルマント特性を変更したとします。この変更は、通常の編集モードでフォルマントをずらさない限り効果を持ちません。なぜなら、ノートアサインメントモードでは、オーディオファイルをオリジナルの状態で聞いているだけだからです。そのため、このような場合、ノートアサインメントモードを終了し、通常の編集モードでフォルマントをずらしてから、必要に応じて再びノートアサインメントモードに戻り、フォルマント特性を再び調整することになります。プレビューコントロールなら、この操作の必要がなくなります。ノートアサインメントモードを終了しなくても、フォルマントコントロールをオンにして、特性スライダーを操作してその効果を試すことができます。テンポとピッチの各コントロールもほぼ同様に動作します。これら3種のプレビューコントロールの値は一時的にのみ適用され、ノートアサインメントモードを終了するたびにリセットされます。
注:シンセが使用されている場合、ピッチとフォルマントのコントロールは同時使用できないため灰色表示となります。
歯擦音: このコントロールでは、歯擦音バランスツールの効果をシミュレートできます。これは、該当する歯擦音の先頭と末尾がどこなのかを聞くことができるため、ノートアサインモードで歯擦音の範囲を変更したい場合に便利です。歯擦音プレビューコントロールスライダーが完全右の場合、歯擦音のみが聞こえます。完全左の場合、歯擦音_以外_のすべてが聞こえます。楽音ゾーンに歯擦音が、あるいは歯擦音ゾーンに楽音が聞こえる場合、歯擦音範囲の境界の線引きが完璧でないことを意味します。
アルゴリズムパラメーター
アルゴリズムインスペクターの他のパラメーターはアルゴリズムの動作に関連しており、オーディオソース全体に対して微調整できます。
再生タイプ:* Melodyneはオーディオの再生に2つの異なる処理を適用します。[メロディック]アルゴリズムは再生タイプ[トーナル]を、他のアルゴリズムは[コンプレックス]をそれぞれ標準で使用します。一般的にはこれらの選択肢が最も優れた結果をもたらしますが、希望に応じて変更することもできます。
違いは、タイムストレッチを実行する際(とノートを上にトランスポーズする際)に最も顕著に表れます。ピッチがはっきりしている素材では、[トーナル]オプションを選択する方が一般的には良好な結果が得られます。ノートのピッチがはっきりしておらず、ノイズ成分が多い素材の場合、[コンプレックス]オプションを選択する方が一般的には良好な結果が得られます。素材が上記2種類に当てはまらない場合、2種類の再生タイプ両方を試すのが一番です。テンポとピッチのプレビューコントロールを使用して、どちらの再生タイプがニーズに合っているかを確認します。[トーナル]が選択されている場合、下で説明している[特性]、[トランジェント]、[フォルマント特性]パラメーターは使用できず、灰色表示にあります。
アドバイス:再生タイプ[トーナル]には、バリエーションとして[トーナル (高)]もあります。ソプラノや非常にピッチの高いメロディ楽器(ピッコロなど)を扱う場合、[トーナル]の代わりに[トーナル (高)]を選択すると、音質を向上させることができます。ただし、通常の音域の声や楽器には[トーナル (高)]は向かないため、このような場合には選択しないことをおすすめします。
特性: このポップアップボタンでは、よりスムーズまたはよりクリスプな再生の間で選択できます。[クリスプ]を選択した場合、より小さなプロセッシング単位が使用され、信号内のすばやい音の動きをよりクリアに再現できます。この設定は、パーカッシブなサウンドや、すばやい音の変化が含まれる素材により適しています。ソフトでサステインするサウンドの場合、この設定だと落ち着かないサウンドになることがあります。これを防ぐには、[スムーズ]を選択します。より大きなプロセッシング単位が選択され、スムーズでゆっくりとした音の動きの再現に適しています。
トランジェント: このパラメーターは、[ユニバーサル]および[パーカッシブ]アルゴリズムの場合にのみ使用できます。再生中の信号のトランジェントの扱いを指定します。スライダーを右端([パーカッシブ]アルゴリズムの場合のデフォルト位置)に移動すると、トランジェントはよりクリアかつ正確になります。スライダーを左に動かすにつれて、トランジェントはソフトになります。デフォルトでは、[ユニバーサル]アルゴリズムが選択されており、スライダーは中央に置かれています。いろんな設定を試し、素材に合わせて最適な設定を見つけましょう。
フォルマント補正上/下: Melodyneでノートをトランスポーズすると、フォルマントが自動修正され、たとえばボーカルの場合に生じがちな「ミッキーマウス効果」を防ぐことができます。ノートを1全音分上にトランスポーズすると、Melodyneはフォルマントを修正し、オリジナルの音色を維持します。人間の声の場合、一般的にこれが望まれる結果ですが、アコースティックギターの場合、状況は異なるかもしれません。フォルマントが基音と並行してトランスポーズされる方が、つまり、自動補正されない方が、魅力が加わることもあります。
そのような理由から、フォルマント上/下スライダーは、上向き/下向きのトランスポーズに対して個別に自動フォルマント補正の度合いを設定できるよう用意されています。スライダーを完全右にすると、100%のフォルマント補正が適用されます。完全左にすると、自動フォルマント補正はまったく適用されません。通常の編集モードに戻ると、ノートエディターで1つまたは複数のノートのフォルマントをシフトするまたはシフトしていた場合にのみこれらのパラメーターの効果が聞こえます。この効果をノートアサインモードでシミュレートおよび検証するには、アルゴリズムインスペクターのプレビューセクションにあるピッチコントローラーを使用します。これに対する現在の値が正の場合、[上]スライダーの効果をプレビューできます。現在の値が負の場合、[下]スライダーの効果が聞こえます。
フォルマント特性: フォルマントがシフトしている場合、このスライダーは周波数範囲内の重み付けを変化させ、シフトしているフォルマントのサウンドを変化させます。さまざまな設定を試し、どの設定が素材に最も適しているかを確認します。このパラメーターには、ノートエディターでノートをトランスポーズしたのでない限り、通常の編集モードに戻っても可聴の効果はありません。この効果をノートアサインモードでシミュレートおよび検証するには、アルゴリズムインスペクターのプレビューセクションにあるフォルマントコントローラーを使用します。
[フォルマントセンター]パラメーターは、[ユニバーサル]または[パーカッシブ]アルゴリズムにのみ関連しますが、それはこれら2つのアルゴリズムが有効な場合、blobは音高で分類されず、そのためフォルマントセンターは自動設定されないためです。フォルマントセンターは音高自体に由来するため、[メロディック]、[ポリフォニック]、[パーカッシブ(ピッチ)]アルゴリズムのいずれかが選択されている場合、このコントロールは灰色表示になります。
歯擦音処理、ロバストピッチカーブ、オーディオを分割
歯擦音処理 [メロディック]アルゴリズムは録音内の「歯擦音」(その定義については以下参照)を検出します。ここには、「s」、「z」、「sh」、「zh」などの摩擦子音と子音二重音字、「t」や「k」などの一部の子音、ボーカリストの息継ぎの音などが含まれます。Melodyne 5でピッチ補正やタイミング補正などを行う場合、これらはサウンドの他の成分とは異なる方法で処理され、結果として編集後のサウンドがより自然なものになります。歯擦音に特別な処理を施さないようにするには、[歯擦音処理]のチェックマークをクリアします。
ボーカルでは歯擦音処理の使用が理想的であることに異議はありませんが、モノフォニック楽器でも同じことが言えるかといえば、それはケースバイケースです。たとえばベースギターの場合、音の立ち上がり部分が歯擦音として識別されるため、初めてメロディやタイミングに修正を加える際は、結果に慎重に耳を傾けて判断する必要があります。思うような結果が得られない場合、[歯擦音処理]のチェックマークをクリアしましょう。
デフォルトでは、[歯擦音処理]は[メロディック]アルゴリズムが選択されている場合は常にオン、[パーカッシブ(ピッチ)]アルゴリズムが選択されている場合はオフになっています。その他のアルゴリズムでは、[歯擦音処理]は使用できないため、コントロールは灰色表示になります。
注:古い(Melodyne 4以前の)プロジェクトを開いた場合、ボーカルトラックの[歯擦音処理]オプションにはチェックマークが入っていません。これは、すでにボーカルの処理が完了しているかもしれず、そうであればプロジェクトが以前と全く同じように聞こえることをユーザーが望むだろうとの配慮から来ています。該当する場合は、[歯擦音処理]をオフのままにしておきましょう。
一方、開いたプロジェクトでMelodyne 5の新機能を利用したい場合は、[歯擦音処理]をオンにしてください。
ロバストピッチカーブ': [メロディック]または[パーカッシブ(ピッチ)]アルゴリズムの場合、高解像度でピッチカーブが検出されます。これは、ボーカルの場合に特に有益で、イントネーションの詳細なコントロールが可能となり、ピッチツールで最適な音質を提供することができるようになります。
ただし、一部の録音では、高解像度が逆効果を生むこともあります。特に、良好とは言えない録音環境(反響しすぎる室内など)で演奏されたモノフォニック楽器や、構造により多声になる仕組みを持つモノフォニック楽器の場合です。
この例としては、エレクトリックアップライトベースや、周波数変調シンセサイザーのサウンドなどがあります。また、低音を響かせるロックシンガー(男性の場合が多い)でも同じことが起こることがあります。
ピッチツールがノイズをもたらす場合、[ロバストピッチカーブ]をオンにするとよいでしょう。
ロバストピッチカーブをオンにしてもすぐには変化を感じませんが、ノートアサインモードでいずれかのツールを使用してノートを編集すると、このノートのピッチカーブが改めて検出され、解像度の比較的低い、_安定_した(ロバストな)カーブが提供されます。
ピッチカーブの再検出をトリガーする最も簡単な方法は、最初のアサインツールでAlt+ダブルクリックすることです。
[ポリフォニック]、[ユニバーサル]、[パーカッシブ]アルゴリズムではデフォルトがロバストカーブになっているため、このオプションは灰色表示になります。
オーディオを分割: オーディオソースの検出結果を編集する際、Melodyneはその処理をバックグラウンドで実行し、かなりのボリュームのデータをキャッシュからやりとりします。[オーディオを分割]オプションでは、この動作をコントロールできます。[自動]ボックスにチェックマークを入れると、変更を行うたびに、Melodyneで必要な計算すべてがすぐさま実行されます。これには、次のようなメリットがあります。プレビューコントロールを使用してアルゴリズム設定をテストするとき、Melodyneは最新のデータにアクセスし、すべては通常の編集モードの場合と同じように聞こえます。しかし、次のようなデメリットもあります。Melodyneにより処理が中断され、進捗インジケーターが表示され、作業が一時的に中断されます。
プレビューコントロールは常に必要なわけではないので、[自動]チェックボックスのチェックをオフにして、このオプションでこの動作を変更できます。 特定の編集操作の場合、必要な計算はすぐには実行されません。[実行]ボタンをクリックするか、ノートアサインモードを修了すると実行されます。このメリットは、ワークフローが中断されないことです。デメリットは、この場合プレビュー・コントロールは最新のデータにアクセスできないため、変更した内容が必ずしも反映されないことです。 前回のデータと現在の状態の間に相違がある場合、[実行]ボタンが点滅して警告します。ボタンをクリックすると、Melodyneが未処理の計算すべてを実行し、データの総計を更新します。
ノートアサインデータを保存/ロード
Melodyne では、必要に応じて、ソースに使用されているアルゴリズム、パラメーター設定、検出への編集内容などのアサインデータをオーディオファイル内に保存できます。これらのノートアサイン要素に加えて、アサインファイルには、オーディオソースについてMelodyneが取得したすべてのテンポ情報(テンポアサインモードでユーザーが変更を加えているであろう情報)も含まれています。
Melodyneはこのアサインデータすべてをオーディオファイルに書き込むことができます。このデータは、オーディオファイルを再利用する場合(Melodyneスタンドアロンの別のプロジェクト、またはARA DAWの新規ソングで使用する場合など)に使用できます。ノート検出とテンポ検出を編集するに十分です。また、アルゴリズムパラメーターや編集状態の情報もファイルを再利用すれば自動的に利用可能になります。
以下のアドバイスは、Melodyne studioにのみ適用されます。
Melodyneではこのアサインデータは自動で保存されるわけではなく、そう設定する必要があります。これは、アルゴリズムインスペクターの一番下にあるオーディオファイル名の横の歯車メニューから行えます。
- 保存:ノート/テンポ検出の現在の状態をオーディオファイルに書き込みます。
- ロード:前回保存したノート/テンポ検出データの状態を復元します。
- 削除:前回保存したアサインデータをファイルから削除します。
メニューコマンドでノートアサインデータをロードする
インスペクター下の歯車をクリックすると、「互換ファイルからロード」コマンドが表示されます。 このコマンドでは、現在のファイルに対して検出データを別のオーディオファイルからロードできます。これを行うには、2つの条件が満たされる必要があります。
- ファイルの長さが現在のターゲットファイルと全く同じであること。
- 現在のソング内の別トラックにファイルが存在していること。ハードディスクにあるだけでは十分ではなく、ハードディスクからソングに取り込まれている必要があります。
ここで、演奏間違いがあり、3つのトラックすべてを同時に修正したいとしましょう。修正をフェーズロックして最適な音質を保つには、3つすべてのトラックが同じ検出ファイルにアクセスしている必要があります。「互換ファイルからロード」コマンドが役立つのはこういった場面です。これは次の手順で行います。
- トラックGTR_DIをノートアサインモードで確認し、必要に応じて検出を最適化します。
- 次に、ファイルGTR_SM57をノートアサインモードで開き、「互換ファイルからロード」コマンドを選択します。リストが表示され、GTR_DIとGTR_U87の2つのエントリが表示されます。先ほど最適化したトラック、GTR_DIを選択します。DI信号と全く同じ検出がSM57に対して表示されます。
- 次に、トラックGTR_U87に対して同じ手順に従い、DI検出ファイルをこのトラックにも割り当てます。
- ノートアサインモードを終了すると、通常の編集モードで3つすべてのトラックのギター演奏を同時に最適化できます。
マイク信号ではなくDI信号の検出の最適化から始めることを強くおすすめする理由は、DI信号のポリフォニック検出はたいてい初回から正しく、このアプローチを採ることでノートアサインモードで必要な作業が減るためです。一方、マイクは、アンプ設定や使用するペダルボードに応じて、歪んだ信号がキャプチャされてしまいがちで、最適化により長い時間がかかります。上記のトリック(DIトラックの検出データをマイクトラックのデータと置き換える)を使用することで、最も短い作業時間で最良の結果が得られます。
Melodyne 4との互換性
バージョン4以前は、アサインデータはオーディオファイルに直接保存されず、拡張子「.mdd」の別ファイルに保存されていました。オーディオファイルにMelodyne 4で作成された.mddファイルがある場合、そこに含まれるアサインデータがロードされます。その場合、次のコマンドは以下のように機能します。
- 保存:ノート/テンポ検出データの現在の状態を(.mddファイルにではなく)オーディオファイルに保存します。
- ロード:アサインデータがオーディオファイルに未保存の場合、.mddファイルからデータがロードされます。
- 削除:.mdd ファイルを削除します。
オーディオファイルにアサインデータがまだ含まれておらず、.mddファイルもない場合、[ロード]と[削除]のコマンドは灰色表示になります。