サウンドエディター - 操作

このツアーでは、サウンドエディターのパラメーターを使用して録音内容の音色を変更する方法を説明します。サウンドエディターで編集するノートの選択方法などその他のテーマについては前のツアー「サウンドエディター - はじめに」をご参照ください。

平均スペクトル

サウンドエディターの機能について詳しく見ていく前に、「平均スペクトル」という語について説明しておく必要があります。

オーディオトラックのノートが検出されると、Melodyneはスペクトル分析を実行して各ノートに含まれるハーモニックパーシャル(これ以降「倍音」と表記)とそれらの音量を測定します。分析が終わると、Melodyneは各ノートの「音響指紋」(スペクトル形状での)を保存します。トラック上の全てのノートのスペクトルを平均後、Melodyneはトラック全体の「平均スペクトル」を取得します。

サウンドエディターを使用したスペクトルの調整の始点は、該当するトラックの平均スペクトルになります。平均スペクトルは、トラックのノートの平均音色と考えるとよいでしょう。平均スペクトルは、サウンドエディターのさまざまな作業エリア内で列のサイズを変更したりカーブを再描画しても固定の細い線として表示されます。

サウンドエディターを開く際に複数のトラックが選択されている場合、これはそれらの平均スペクトルとなり、表示され編集の基盤となります。

強調とダイナミクス

[強調]と[ダイナミクス]スライダーは、トラックの音色と振幅を操作するシンプルでありながら効率的な方法を提供します。これらはサウンドエディターの他の要素から独立して機能し、ディスプレイには影響を与えません。これらのコントロールのいずれかまたは両方を使用するにはサウンドエディターを開く方がよい場合もあります。

[環境設定]ダイアログの[ユーザーインターフェース]ページの[ツールチップを表示]オプションにチェックマークを入れると、マウスオーバーするとさまざまなコントロール要素名がポップアップ表示されるようになります。

強調: このスライダーを中央(ニュートラル)から右に動かすにつれて、ノートのスペクトルと平均スペクトル間の差異が広がります。これにより、平均スペクトルからスペクトルが逸脱するにつれてその特性が強調され、違いは漸進的に強調されます。

スライダーを左に動かすと逆の効果が得られ、該当するノートのスペクトルがより平均に近づくのと同じになります。この場合、特性は徐々に消えておき、トラック全体の音色がより統一されます。

[強調]スライダーは、ボリュームを変更することなく、ミックス内の特定のソース部分の存在感を上げたり、他の部分を分かりにくくして上手くなじむようにしたりする優れた手段を提供します。

[強調]スライダーは両方向にかなり広い範囲で変更でき、エフェクトの生成にパワフルなツールでもあります。ただし、素材によっては、ずっと小さな値でさまざまな結果が得られます。そのため、このコントロールは慎重に操作することをおすすめします。Altキーを押したままスライダーを動かすと、パラメーターを1セント単位で上下に変更できます。

ダイナミクス: このスライダーはノートの振幅、具体的にはノートの内部ダイナミクスに影響します。スライダーを右に動かすと、各ノートの静かな部分はより静かになり、左に動かすとより大音量になります。つまり、スライダーを右に動かすと、各ノート内の振幅の変動が強調され、左に動かすと、変動がスムーズ化されます。

たとえば、[ダイナミクス]スライダーをピアノ録音に適用すると、スライダーを右に動かすとノートの減衰がより早くなり(スタッカート効果)、スライダーを左に動かすと減衰がよりゆっくりになり、パッセージにレガートの雰囲気が生まれます。[ダイナミクス]スライダーは均一の振幅のノート(オルガンなどの同じエンベロープ)では、多少音が大きくなる以外、影響が現れません。

アドバイス:ポリフォニック素材では、[ダイナミクス]スライダーを左に動かすと、元は重なっていなかったノートが重なり合うことがあり、ヘッドルームが不十分な場合、歪みのしきい値を超えることがあります。ただしこれは、[ゲイン]ノブを逆時計回りに回しておくことで簡単に防ぐことができます。

バイパス、ゲイン、グローバルのサウンドエディターメニュー

サウンドエディターの右上隅には、サウンドエディターを完全に無効にして無編集のトラック信号のみが聞こえるようになるバイパススイッチがあります。このスイッチを使用して、編集済み信号と未編集信号のサウンドをすばやく比較できます。

スペクトルの編集にはレベルの劇的な変化が含まれるため、Melodyneは自動的に補正を適用し、出力レベルがだいたい同じようになるようにします。ただし、まれに歪みのしきい値を超えたり、出力レベルが低すぎたりすることがあります。このような 場合、ゲインコントロールを使用してレベルを手動で調整できます。

ドロップダウンメニューには3つのコマンドがあります。[すべてリセット]はサウンドエディターの作業エリア全てを管理し、該当のトラックに対して初めて開いたときの状態に戻します。同様に、[設定をコピー]では開いているサウンドエディターの作業エリア_全て_の設定をコピーし、下の[設定をペースト]コマンドを使用して別のトラックに適用できます。

[設定をコピー]コマンドは、ソーストラックの平均スペクトルをコピーせず、特定の倍音の音量を大きくまたは小さくするなど、それに対して行った総体的な調整のみコピーしますのでご注意ください。そのため、この設定をペーストすると、ペースト対象のトラックの平均スペクトルに対して同じオフセットが適用されます。該当する倍音の最終的なレベルは、最初の音量に大きく依存し、コピーしたソーストラックの同一の倍音の編集には(その他の設定と併せて)部分的にしか依存しません。

作業エリア

タブを使用して、サウンドエディターの作業エリアを切り替えることができます。Commandキーを押したまま操作すると、使用可能なスペースに応じて複数の作業エリアを隣り合わせに開くことができます。開いている複数の作業エリアのいずれかを閉じるには、タブをCommandクリックします。

作業エリアにはそれぞれ、中央ディスプレイとその下にいくつかのスライダーがあります。詳細を説明する前に、いくつかの作業エリアについて見てみましょう。

倍音、Lo、Hi: これらの作業エリアでは、ノートの上音構成を直接操作できます。それぞれレイアウトは同じで、全てのノートをコントロールする[倍音]が最も重要です。[Lo]と[Hi]は単に、希望に応じて、基音がトラックの音域の下半分(Lo)または上半分(Hi)にあるノートの倍音をさらに調整できます。

EQ: 周波数スペクトルを半音単位で帯域に分割できるグラフィックイコライザーです。[EQ]と[倍音]、[Hi]と[Lo]の各作業エリアの違いで重要なのは、後者はノートの上音のレベルを調整する(それぞれの基音のピッチによりその周波数は異なる)のに対し、EQは一般的なグラフィックEQのように固定周波数帯域に対して働く点です。

シンセ: この作業エリアには3つのエンベロープがあり、それぞれ、スペクトルに行った変更の各ノートの存続期間全体への影響、フォルマントの上向きまたは下向きのグライド、振幅内の内部変化を調整します。ここにも、サウンドエディターの再合成を調整する2つのグライダーがあります。

倍音、Hi、Loの各作業エリア

[倍音]エリアには選択されているトラックのノートの倍音スペクトルが表示され、これを編集できます。

パネルに表示されている棒グラフは、フィルターバンクやスペクトルフィルタリングを行うプラグインの表示を思わせる形状になっています。ただし、こういったフィルターとこれとはひとつ大きな違いがあります。それは、このスペクトルは各ノート、つまり基音のピッチに関連している点です。これが可能なのは、Melodyneはトラック上で聞こえるノートを認識することができるためです。

これはつまり、たとえば3番目のバーの高さを上下に変更しても、周波数スペクトルの固定帯域のレベルは変わりませんが、全てのノートの3つ目の倍音(その周波数は各ノートにより異なる)は変わるということになります。

いわば、ソースでサウンドを編集し、音色に非常に直接的な影響を与えていることになります。そのため、倍音バーは、イコライザーのバンドなどとよりも、アディティブ・シンセのオシレーターやオルガンのドローバーなどと共通点を持ちます。これらは、トラック上の全てのノートの倍音の相対振幅(最初の倍音である基音のそれを含む)を反映し決定します。提供される音色のシェイピング機能は、繊細で広範にわたります。

編集のスタート位置はいつもトラック全体の平均スペクトルとなり、Melodyneは前回の分析からその位置を決定します。トラック再生中に上下に動く丸は、該当の倍音のレベルを示しています。バー最上部で示される平均値を中心に常に上下に動いているのが分かります。バーの高さを変更すると、平均スペクトル内の該当の倍音のレベルが、細い線として表示されたままになります。

[Lo]と[Hi]の作業エリアは[倍音]エリアを補完します。これら3つのエリアは同時に有効になり、その効果は累積します。[Lo]と[Hi]の作業エリアは[倍音]エリアと全く同じ機能セットを提供しますが、それぞれ、該当するトラックの音域の下半分または上半分にあるノートの倍音にのみ影響します。半分の位置は、Melodyneが自動で決定します。2つのリージョンに対する設定は、音色がスムーズに推移するよう、クロスオーバーゾーンでは互いにひとつに変化します。

たとえば、高めの音は完璧なのに、低めの音が少しぼんやりしたピアノトラックがあるとします。この場合、一般的なイコライザーを使用して低めの音とミッドレンジを明るめに変更しようとすると、高めの音が明るくなりすぎてしまいます。一方、サウンドエディターではそのような問題は生じません。高めの音には影響を与えずに、[Lo]作業エリアで低めのノートの倍音スペクトルを編集し、同時に、低域に影響を与えることなく、[Hi]作業エリアで高めの音を調整できます。[倍音]作業エリアの設定は有効なままとなり、全ての音に対するコントロールを補完する機能を提供します。

倍音バーと使用方法

[倍音]、[Lo]、[Hi]作業エリアのバーはノートの倍音パーシャルを示しています。「1」と表示されているバーは第1倍音(基音)で、その右の「2」「3」「4」バーはそれぞれ第2、第3、第4倍音を示します。周波数はそれぞれ基音の2倍、3倍、4倍となります。「<」と表示されている一番左のバーは、基音を下回る全ての周波数のレベルに影響します。複数のソースがある場合、このバーを下に下げるとサウンドがクリーンになります。

バーの高さを調整するには、次の手順で行います。

  • バー最上部を上下にドラッグして高さ(と対応する倍音のレベル)を変更します。
  • 微調整するには、Altキーを押したまま操作します。
  • バーの上の白いゾーン内を水平にドラッグして範囲を選択します。
  • 選択範囲内の全てのバーの高さを同じ量だけ調整するには、選択範囲内の中間色のエリア(最下部の暗い部分ではなく)を上下にドラッグします。選択範囲のすぐ上の位置(マウスポインターの形が変化する部分)からドラッグすると、ポインターに一番近いバーが最も遠い位置に移動し、最も遠い位置のバーが次第に近い位置に移動します。
  • 隣り合わないバーを選択(または選択解除)するにはShift-クリックします。
  • 対応する倍音の全てのオクターブを選択するには、バーをダブルクリックします。
  • 倍音または選択範囲の倍音を平均スペクトルの元のレベルに戻すには、該当のバーまたは選択範囲をCommand-クリックします。

[倍音]、[Lo]、[Hi]作業エリアのプルダウンメニューには以下のコマンドがあります。これらは、それぞれのディスプレイの全ての倍音バーに影響します。

  • スペクトルをリセット:該当する作業エリア内の倍音のバーを元の位置に戻し、平均スペクトルを反映します。
  • スペクトルをコピー:別のエリアまたはトラックにペーストできるよう、選択されているエリアのスペクトルをコピーします。スペクトルのコピーは、面白い色付け効果やモーフィング様の効果を与えます。このコピーを実行すると、コピーされたスペクトルに現在の輪郭設定が考慮されますが、他のマクロスライダーの値は単にコピーされ、フォルマント設定は無視されます。
  • スペクトルをペースト:このコマンドは、上述の[スペクトルをコピー]コマンドと連動して機能します。コピーされたスペクトルが、編集されるトラックの現在選択されている作業エリア(倍音、Hi、Lo)にペーストされます。コピー&ペーストは、同一ドキュメント内のトラック間や、あるドキュメントから別のドキュメントに対して行えます。ペーストが実行されると、対象トラックの輪郭パラメーターがリセットされ、範囲全体がその後の編集の対象となります。
  • スペクトルをクリア:これは、ミキサーのフェーダーすべてを下げるようなものです。結果として無音となり、新しい音色をゼロから作り上げたい場合に便利です。
  • スペクトルをシャッフル:すべての倍音をランダムなレベルに設定します。
  • すべての倍音を表示:すべての倍音(高さに関係なく)を表示させるか、最も低い倍音と最も重要な倍音のみを表示させるかを選択できます。後者の場合、小節がより広くなり、変更がしやすくなります。最も高い倍音は表示されていないが、選択範囲に_表示中の_一番右の小節が含まれている場合、それより上の倍音でディスプレイ外のものすべても選択範囲に含まれ、編集の対象となります。

倍音、Lo、Hiのマクロコントロール

3つの作業エリアにはそれぞれ同じスライダー4つがあります。これらはさまざまな倍音のレベルを制御するマクロコントロールで、その効果はディスプレイに即座に反映されます。いずれかのマクロコントロールをCommand-クリックすると、中間位置にリセットされます。これにより、それ以前に倍音のレベルや倍音バーの高さに施された操作が削除されますが、手動で行った変更(マクロを使用して行った変更以外)はそのまま残ります。

ブリリアンス: このスライダーを右に動かすと、高めの倍音のレベルが上がり、サウンドがより明るくなります。左に動かすと、高めの倍音が静かになり、サウンドがぼんやりします。

輪郭: このスライダーを右に動かすと、隣り合うバー間の高さの違いが大きくなり、山は高く、谷は深くなり、一般的に表示の輪郭がシャープになります。スライダーを左に動かすと逆の効果が生まれ、中央に向かって動かすにつれて徐々に元の輪郭に戻り、さらに左に動かすとフラットになります。

奇数/偶数: 右に動かすと奇数の倍音が徐々にフェードアウトし、左に動かすと偶数の倍音がフェードアウトします。前者の場合、オクターブは着実に強化され、後者の場合、ソースは徐々に空のようなクラリネットのようなサウンドになります。

コム: このスライダーは倍音スペクトルをまばらにし、次第に奇妙な効果(櫛(コム)を思わせる表示)が生まれます。スライダーの両側のボタンではコムを横にスライドでき、これもサウンドに劇的な効果を与えます。スライダーを中央位置のままにした場合、右のボタンをクリックすると、スペクトルから一番低い倍音がひとつずつ排除されます。

倍音を示すバーの4つのスライダーを自由に組み合わせ、豊富なサウンドデザインのオプションを提供します。

EQ作業エリア

この作業エリアにはグラフィックイコライザーが含まれています。このイコライザーは、通常の場合、周波数スペクトルの固定帯域上で動作します。イコライザーは周波数スペクトルを半音幅の帯域に分割し、一番下の階名で調整されます。

イコライザーはオーディオのスペクトル範囲内の固定周波数帯域で動作するため、[倍音]、[Lo]、[Hi]の作業エリアで提供されるもの(バーでさまざまな倍音を示す)とはかなり異なるアプローチをサウンドのシェイピングに提供します。4つ全ての作業エリアは同時に使用することができます。

イコライザーを使用した編集のスタート位置はいつも編集されるトラックの平均スペクトルとなり、これはオーディオのスペクトル全体で示されます。トラックに高い音または非常に明るいサウンドの音がたくさん含まれている場合、EQカーブの右側の端はより高く(山のように)なります。

カーブを再形成する際、元の平均スペクトルが細い線で表示されます。再生中、その瞬間のスペクトルが、現在のカーブを上下に動く丸で示されます。

EQ作業エリアとその他のエリアの間で混乱を防ぐため、倍音ベースのもの、各帯域の現在のレベルは、水平の線ではなくカーブでここに表示されます。ただし、さまざまな周波数帯域のレベルの調整には、他のウィンドウでの倍音バーの高さの調整と同じテクニックが使用されるため、バーの選択とドラッグ方法を説明したセクションをまだお読みでない場合、まずそのセクションをご覧ください。

イコライザーは、基礎として編集されるトラック内で検出されたノートを使用します。これはつまり、正確に認識されていないオーディオ素材内のノートは、正しいEQ帯域に割り当てられず、また正しい帯域によりコントロールされません。ポリフォニック素材内のノートが検出されない場合、ノートが誤って本来より低いまたは高い音に割り当てられます。

前者の場合、そのエネルギーはより低い音の上音内に割り当てられ、EQスペクトル内にそのように表示されます。一方、より高い音に割り当てられる場合、イコライザーの最低帯域になり、「<」として示されます。ここには、検出された音の基音を下回る全ての周波数成分、またはどの音にも割り当てられない周波数成分が集められます。「<」帯域に集められるトラックの信号成分を聞くには、これを解除する前にその他全ての帯域をクリアする(ゼロに設定する)ことができます。

ノートアサインメントモードで検出を分析または必要に応じて編集し、検出されていない全てのノートを有効化してこれらがイコライザーにより正しく処理されるようにします。

ローカルのドロップダウンメニューには、EQスペクトルに対する次のコマンドがあります。

  • スペクトルをリセット:元の平均スペクトルを復元します。
  • スペクトルをコピー:別のトラックにペーストできるよう、現在のEQスペクトルをコピーします。このコピーを実行すると、コピーされたスペクトルに現在の輪郭設定が考慮されますが、他のマクロスライダーの値は単にコピーされ、フォルマント設定は無視されます。
  • スペクトルをペースト:このコマンドは、上述の[スペクトルをコピー]コマンドと連動して機能します。コピーされたEQスペクトルが、編集されるトラックのEQ作業エリアにペーストされます。コピー&ペーストは、同一ドキュメント内のトラック間や、あるドキュメントから別のドキュメントに対して行えます。ペーストが実行されると、対象トラックの輪郭パラメーターがリセットされ、範囲全体がその後の編集の対象となります。
  • スペクトルをペースト:このコマンドは、[コピー]コマンド(Ctrl+C)と連動して機能し、[編集]メニューおよびノートエディターのコンテキストメニューにもあります。ノートエディター内でblob(または同一トラック上の複数のblob)を選択してコピーすると、該当するblobのスペクトル(または選択されている複数のblobの平均スペクトル)をEQ作業エリアにペーストできます。コピーされたスペクトルはサウンドに適用され、面白い音色が得られます。
  • スペクトルをクリア:すべての帯域を最小値に設定し、結果として無音となります。
  • スペクトルをシャッフル:すべての帯域をランダムなレベルに設定します。試してみてください。

EQマクロスライダー

マクロスライダーは全ての周波数帯域のレベルに影響し、その効果は即座に帯域の高さに反映されます。いずれかのマクロコントロールをCommand-クリックすると、中間位置にリセットされます。これにより、それ以前に帯域の高さに施された操作が削除されますが、手動で行った変更(マクロを使用して行った変更以外)はそのまま残ります。

コントロール(左から右):

ブリリアンス: このスライダーを右に動かすと、高めの帯域のレベルが上がり、信号の高周波数成分がより目立つようになります。左に動かすと、高めの帯域が弱くなり、サウンドがぼんやりします。

輪郭: このスライダーを右に動かすと、隣り合う帯域間の高さの違いが大きくなり、山は高く、谷は深くなり、一般的に表示の輪郭がシャープになります。スライダーを左に動かすと、まずはスペクトルが徐々にリニアになり、次に反転します。

調性: 右に動かすと、その音階に無関係なノートがフェードアウトします。左に動かすと、音階に関係するノートがフェードアウトします。

コム: 前者の場合、5度圏内の主音から最も遠い音から順に、5度圏とそのオクターブだけになるまで削除されます。スライダーの両端のボタンを使用して、どの音をこの目的での主音とするかを、5度圏を時計回りまたは逆時計回りで順に選択して決定できます。左のボタンは、現在主音に指定されている音を示します。

メインのEQディスプレイ内の各周波数帯域を直接編集して4つのスライダーを自由に組み合わせることができます。

フォルマント

フォルマントは周波数スペクトル内のピークで、その位置は、基音のピッチには直接には関係していません。フォルマントは、各楽器やボイスにそれぞれの特徴を与えるのに役立ちます。これまでにMelodyneを使用したことがあれば、フォルマントツールについてはご存じのことでしょう。フォルマントツールでは、ノートのフォルマントを上下にずらすことで、ノートのサウンドを変更できます。

サウンドエディターもフォルマントへのアクセスを提供します。EQ、倍音、Lo、Hiの各作業エリア内でフォルマントを編集でき、編集内容は該当のトラックの全てのノートに影響します。フォルマントへは、バーまたは帯域の下の濃い灰色のゾーン(倍音またはノート名が表示されている部分)からアクセスできます。

  • このエリアを水平にドラッグして、倍音またはEQ帯域全てを左右するフォルマントをずらします。
  • 隣り合うバーまたは帯域を選択して操作すると、そのバーまたは帯域のみを左右するフォルマントをずらすことができます。この処理を繰り返すことで、複数のフォルマントをさまざまな方向にずらすことができ、ずらす量を変えることで、複雑なフォルマント推移パターンを生成できます。

  • フォルマントゾーンをCommand-クリックすると、音域全体を通して元のフォルマントに戻ります。

サウンドエディターで説明したテクニックのフォルマントツールと、トラックインスペクター内の[フォルマント]ノブは、同時に適用させることができます。組み合わせた効果は次のとおりです。

  • フォルマントツールは、選択されているノートのフォルマントを上下にずらします。サウンドエディター内でトラックのフォルマントが該当のノートの方向に「曲げられて」いる場合、この「曲げられている」フォルマントがずれます。つまり、フォルマントツールは、サウンドエディター内に表示されているフォルマント構造に対して、ノートに基づくオフセットを付加します。
  • トラックインスペクターの[フォルマント]ノブと、サウンドエディターが提供するフォルマントシフト機能は、トラック全体に影響し、連携して働きます。[フォルマント]ノブを回すたびに、サウンドエディター内のフォルマント構造(実行済みの編集を含む)全体が上下にずれます。EQまたは倍音作業エリア内で全ての倍音をずらすと、[フォルマント]ノブがそれに従って動きます。一方、サウンドエディター内で一部の倍音や周波数帯域のみを選択している場合、[フォルマント]ノブには変更が反映されません。

フォルマントは基音が変化する際には動かないため、厳密には、フォルマントを編集できるのはサウンドエディターにある4つの作業エリアのうちひとつ(EQ作業エリア)だけです。倍音、Lo、Hiの作業エリアでは、バーはノートの動きに平衡して動く倍音に結びつけられているため、「スペクトルの変更」と呼ぶにふさわしい操作です。とはいえ、4つの作業エリアで説明したテクニックを使用しても有益な結果を得ることはできます。それらの複合効果は以下のとおりです。

  • EQの全帯域に適用されたフォルマントシフトは倍音作業エリアに反映されます。同様に、倍音作業エリアの全バーに適用されたフォルマントシフトはEQに反映されます。HiおよびLo作業エリアにはEQの全帯域に適用されたシフトが反映されます。
  • ただし、HiまたはLo作業エリアでのフォルマントシフトは倍音またはEQ作業エリアには反映されません。これは、HiおよびLo作業エリアはそれぞれ音域の半分にしかアクセスしないため、各エリアになされた変更は基音またはEQ作業エリアに表示できないためです。
  • Hiおよび/またはLo作業エリア内でフォルマントをずらしてから、倍音またはEQ作業エリアで全てのフォルマントをずらした場合、結果はHiおよび/またはLo作業エリアに反映されます。Hiおよび/またはLoで構築したフォルマント構造が、この場合まとまってずれます。同様に、HiまたはLo作業エリアでの倍音をリセットしても、倍音またはEQ作業エリアには反映されません。
  • 一方、倍音またはEQ作業エリアでフォルマントをリセットすると、4つ全ての作業エリアに変更が反映されます。倍音およびEQ作業エリアではフォルマントはリセットされ、HiおよびLoではそれぞれのウィンドウで実行された編集のみ効果を維持します。
  • フォルマントシフト前に全ての倍音または周波数帯域が選択されていない場合、変更は、フォルマントシフトが実行された作業エリアにのみ反映されます。

[シンセ]エリアのエンベロープ

この作業エリアには3つのエンベロープがあり、それぞれ、スペクトル編集の強度、フォルマントシフト、ノートのボリュームをダイナミックにコントロールできます。ここにも、サウンドエディターの再合成を調整する2つのグライダーがあります。

エンベロープでは、編集されているトラックのノートにさまざまな方法で影響を与えることができます。たとえば、ピアノトラックのノートのアタックをわずかに伸ばして、楽器に微妙に異なる特徴を与えることができます。また、スペクトルフィルタリングを使用することもできます。同時に、各ノートのフォルマントを上方向にグライドさせることもできます。

これらの効果は編集中のトラックのノート全てに直接作用します。各ノート(ポリフォニックなオーディオ素材に含まれるものであっても)は、他のノートから独立して、それぞれのエンベロープの指示に従います。操作原理は、エンベロープジェネレーターやポリフォニックシンセサイザーのそれとほぼ同じですが、サウンドエディターのエンベロープはMIDIメッセージではなく、オーディオトラックのノート(より正確に言えば、ノートの音楽的なスタート位置)によりトリガーされます。ノートに明確なスタート位置がない場合、先行するノート分割がエンベロープトリガーとして機能します。(Melodyneのノートアサインメントモードではノートのスタート位置を調べて設定することができます。)

エンベロープを形成するには、三角形のハンドルをドラッグするか、灰色のエリア内を直接ドラッグします。各エンベロープには、スタートレベル、アタックタイム、サステインレベル、サステインタイム、ディケイタイム、最終レベル(ディケイ段階後のレベル)の6つのパラメーターがあります。

各エンベロープの下のルーラーをドラッグして、エンベロープディスプレイに示される時間の長さとエンベロープの作成に対して使用可能な時間の長さを秒単位で決定できます。

さまざまなパネルにある[スペクトル]、[フォルマント]、[音量]の横のチェックボックスは、それぞれのエンベロープジェネレーターの有効化と無効化に使用します。エンベロープをCommand-クリックすると、元のニュートラルな設定に戻ります。

これらは3つのエンベロープディスプレイ中央の水平線で示されます。この中央線より上のエリアでは、エンベロープによって、スペクトルフィルタリングの強度が上がるか、フォルマントが上向きにシフトするか、音量が上がるかします。この中央線より下のエリアでは、エンベロープによって、スペクトルフィルタリングの強度が下がるか、フォルマントが下向きにシフトするか、音量が下がるかします。

[スペクトル]エンベロープは、倍音、Hi、Lo、EQの各作業エリア内で効果を持つ元の平均スペクトルになされた全ての変更の強度を左右します。[フォルマント]エンベロープは、フォルマント構造全てを上方向または下方向に動かすことで、これらのエリア内の全てのフォルマントシフトに影響します。

[シンセ]エリアの[再合成]コントロール

サウンドエディターは、信号をさまざまな周波数に分割し、これらに変更を加えてから組み合わせて新しい信号を形成します。そのため、組み合わせられた信号には、ハーモニックパーシャル(基音の整数次倍の周波数)だけでなく、スペクトル内に散在し、ハーモニックパーシャルとほとんど一致しないインハーモニックパーシャルとシンプルなノイズ(下弦やペダルのきしみや背景雑音など)も含まれています。

倍音、Lo、Hiの作業エリアのバーはこのハーモニックパーシャルが中心となっていますが、Melodyneは、有限数のサイン波オシレーターしか使用できない純然たる他のシンセサイザーと異なり、パーシャル間の信号成分が失われることがなく、信号内で再生成され、オリジナルに忠実であり続けます。倍音バーを動かすことでサウンドを(希望に応じて劇的に)変更できますが、基本となるのは常に元の録音の素材です。

2つの[再合成]スライダーを使用する際は別です。

大きさ: このスライダーを右に動かすと、スライダーが右端に到達して各ノートの存続時間音色の変化がまったく起こらなくなるまで、各倍音の振幅の変化が徐々に低減します。結果として丸が上下に動かなくなり、倍音バーの最上部に留まります。スライダーを右に動かすと、各倍音に割り当てられている帯域が狭まり、非倍音成分が徐々に信号から消失します。

位相: さまざまなパーシャルの異なる位相も、信号の自然な再現にかなりの影響を与えます。スライダーを右に動かすと、全てのパーシャルが同相になるまでパーシャル間の元の位相比が徐々に低減していきます。これは主に信号内のトランジェントに影響し、サウンドがより人工的になります。[位相]と[大きさ]コントロールは、単独または組み合わせて使用できます。

両方のスライダーを右端にした状態だと、結果は特に「人工的」でシンセ波形を思わせるサウンドになります。これは、倍音、バー、エンベロープなどを使用したサウンドデザインの起点として使用できます。