フェードと歯擦音バランスのツール

  • レベル調整ツール– ダイナミクス機能についてのハンズオンビデオ:_特に_フェードツールとレベル調整マクロについて。Melodyne 5 studioの場合。別エディションでは異なることがあります。日本語字幕。

[音量]ツールの下には、トラック内のボリューム比のコントロールを提供する追加ツールがあります。

フェードツール:ノートのフェードインとフェードアウト

ノートエディターのツールバーまたはコンテキストメニューから選択する、またはコンピューターキーボードのF4キーを素早く2回押すと、フェードツールが有効になります。このツールを有効にするのに別のキーの組み合わせを使用したい場合、[環境設定]ダイアログの[ショートカット]ページで別の組み合わせを簡単に定義できます。

フェードツールを使用すれば、ノートの冒頭にフェードインを、ノートの末尾にフェードアウトをそれぞれ個別に適用できます。

フェードインの場合、ツールでノートの左端をクリックし、マウスボタンを押したまま左または右にドラッグします。三角形のハンドルが表示され、マウスを動かすとハンドルの長さが変化します。

同時に、blobの形が変わり、ラウドネスの輪郭に変化が生じていることを示します。

クリックしてマウスボタンを押したままドラッグする代わりに、ダブルクリックで新しいフェードを作成することもできます。ノートの前半分をダブルクリックすると、フェードインが作成されます。フェードアウトを作成する場合は、ノートの後半分をダブルクリックします。

フェードインが作成されると、該当するノートと先行するノートの間のソフトな分割はすべてハードな分割に置き換えられます。フェードアウトの場合、フェードアウトするノートと後続のノートの間にハードな分割が挿入されます。

フェードをダブルクリックすると、フェードが削除され、blobのダイナミクスの輪郭が元に戻ります。ノートのダイナミクスの輪郭を元に戻すもうひとつの方法は、右クリックしてコンテキストメニューから[フェードを破棄]を選択します。どの方法を選択しても、ハードな分割はそのまま残りますのでご注意ください。これを元のソフトな分割に戻すには、分割タイプツールを使用する必要があります。

フェードを選択して複数のノートに同時に適用することもできますし、また同時に調整することもできます。

フェードの長さやカーブを変更するには、以下の手順で行います。

  • 長さを変更するには、フェードをクリックして左右にドラッグします。
  • カーブを変更するには、カーブをクリックして上下にドラッグします。

フェードインの末尾を右方向にドラッグし、ノートに適用されているフェードアウトの先頭に到達しても、さらにドラッグを続行できます。この場合、フェードインが延長され、フェードアウトはそれに合わせて短縮されます。

また、フェードアウトは左に伸ばすことで長くすることもできますが、この場合、フェードインと重なる位置までです。

フェードインとフェードアウトが重なり合うことはありません。

フェードと他のツールとの関連性

フェードの長さはミリ秒で定義されるのではなく、ユーザーが指定したノート内の位置に結び付けられます。つまり、たとえばフェードアウトのあるノートをタイムツールを使って長さを伸ばすと、フェードアウトも同じ分だけ伸ばされます。これは、特に他のツールと組み合わせることにより、DAWが提供するリージョンやクリップの固定フェードに比べてずっと大きな音楽的可能性を提供します。

もうひとつ例を挙げましょう。フェードアウトは(当たり前ですが)ノートの末尾まで続きます。ただし、ノートの末尾までのどこかにトラック上に不要なノイズがあり、フェードアウトをこのノイズの前で終わらせたい場合、ノート分割ツールを使用してノートを分割し、分割の右側のノートを削除(またはミュート)してから、ノートの残りの部分に新しいフェードアウトを適用します。

フェードを配置することで、該当のノートと後続のノートの間にハードな分割が挿入されます。これにより、タイムツールを使用してオーバーラップを簡単に作成してから、フェードツールを使用してその間にクロスフェードを作成できます。

歯擦音バランスツール:歯擦音と息継ぎの処理

ノートエディターのツールバーまたはコンテキストメニューから選択する、またはコンピューターキーボードのF4キーを素早く3回押すと、歯擦音バランスツールが有効になります。このツールを有効にするのに別のキーの組み合わせを使用したい場合、[環境設定]ダイアログの[ショートカット]ページで別の組み合わせを簡単に定義できます。

歯擦音バランスツールでは、歯擦音のラウドネスをサウンドの他の成分と相対させてコントロールするこができます。これは、[メロディック]または[パーカッシブ(ピッチ)]アルゴリズムでのみ選択できます。他のアルゴリズムでは灰色表示になります。

ボーカルトラックの場合、Melodyneでは、「s」や「ch」のサウンドだけでなく、場合によっては「k」や「t」、さらに息継ぎの音も歯擦音として認識されます。サウンドのこれらの成分には明白な音高がありません。インストゥルメントトラックを含め、大まかに言ってMelodyneでは主にノイズから構成される信号部分すべてを歯擦音として認識されます。

歯擦音バランスツールでノートまたはノートの選択部分を上にドラッグする(正の値)と、サウンドの楽音成分の音量が小さくなります。下にドラッグする(負の値)と、歯擦音の音量は小さくなります。

ボーカルの場合、極値に設定すると、歯擦音と息継ぎの音だけが聞こえる(上にドラッグ)か、サウンドの楽音成分のみが聞こえる(下にドラッグ)ようになります。これだと舌足らずな発音に聞こえるようになりますが、用途によってはこういった極値設定が適している場合もあります(下参照)。

歯擦音バランスツールをダブルクリックするとパラメーターが-100%になり、歯擦音が最大まで減衰(ミュート)されます。もう一度ダブルクリックするパラメーターが0%になり、ノートが元の状態に戻ります。

スピーチや歌声では、サウンドは常に_歯擦音_または_楽音_であるわけではありません。ときにはその両方であることもあります。つまり、サウンドは楽音と非楽音の混合です。歯擦音バランスツールはこれを考慮に入れた上で機能し、サウンドのノイズ成分のみを処理します。このようなアプローチは、音楽的に極めて理に適ったものです。上記にかかわらず、1つの音が1つのblobで示されるため、ソフトウェアの直感的な操作を犠牲にすることが_ありません_。

歯擦音バランスツールの用途

歯擦音が目立つ場合(シンガーの癖によるもの、または録音時のシグナルチェーンのデザインや調整の問題)、通常であればディエッサーを使用するところです。ですが、ディエッサーは信号全体に作用するため、コントロールの調整が難しいこともあります。これは、問題のない歯擦音にも負の影響を与えてしまうことがあります。さらに、サウンドの楽音部分に不要な影響を与えてしまうこともあります。それに比べて、歯擦音バランスツール(値-40%~-10%)は設定が簡単で、より正確に動作し、音響上より優れた結果をもたらします。

バッキングボーカルやダブルトラックの場合、-80%あたりの設定値を使用することもできます。それだけを聞くと舌足らずな音に聞こえるかもしれませんが、リードボーカルをミックスに戻すと全体としてより整った音になり、特に語尾の不安定さが修正されます。この不安定は主にダブルトラックでよく問題となり、ディレイやリバーブを適用すると特に目立つようになるため、ミックスでの座りの調整が必須になります。Melodyneなら、わずか数クリックでこのようなよくあるミキシングの問題をコントロールできます。バッキングボーカルの全ノートを選択してから、歯擦音バランスを-80%あたりに設定するだけです。

サウンドデザインとミキシングでのアドバイスをもうひとつ。まずボーカルトラックを複製します。一方のトラックで歯擦音バランスを-100%に設定し(歯擦音や息継ぎが一切聞こえなくなる)、もう一方のトラックで同じパラメーターを+100%に設定します(このトラックでは歯擦音や息継ぎだけが聞こえる)。ここで、ミキサーで両方のトラックのボリュームを同一にして、以前とまったく同じ信号が聞こえるようにします(2トラックに分割された状態)。これだと、歯擦音のないトラックにはエフェクトチェーン(ディレイ、リバーブ、その他)を徹底的に使用し、歯擦音を含むトラックには限定的に使用する(あるいは一切使用しない)ことができます。

注:Melodyneでは各歯擦音の正確な位置と長さが自動検出されます。つまり、ボーカルトラックのほとんどでは、ユーザーがこれを意識する必要はありません。ユーザーは、歯擦音バランスツールを使用して楽音成分と非楽音成分の間の理想的なバランスを見つけるだけでかまいません。とはいえ、(ボーカルに限らず)サウンドデザインで実験的な試みを行いたいといった場合、歯擦音検出結果を調整することもできます。これを行うには、ノートアサインモードに切り替えて歯擦音レンジツールを選択します。このツールの使用について詳しくは こちらをご参照ください。