オーディオを転送する
このツアーでは、オーディオ素材をMelodyneプラグインに転送する方法と、Melodyneプラグインの使用方法の基礎について説明します。
Melodyneのしくみ
Melodyneでは、編集機能を使用する前に、まずオーディオ素材を分析する必要があります。
この分析ではオーディオファイルを全体として調べる必要があるため、リアルタイムで実行することはできません。ノートエディターに最初のblobが表示される前に、冒頭に1回のみ実行されます。スタンドアローンバージョンのMelodyneでは、オーディオファイルを初めて開くときに実行されます。
プラグインでは、話はもうすこし複雑です。プラグインインターフェースはリアルタイム操作向けにデザインされており、再生されているオーディオファイル部分のみが表示されることが多く、全体像がつかみにくくなっています。しかし、前述のようにMelodyneではより総合的な情報が必要です。編集したいトラックの一部分を事前に送信し、Melodyneに内容を「学習」させる必要があるのはそのためです。
これが、「転送」の目的です。これは基本的には録音処理で、そうすることによりMelodyneプラグインがDAWで再生されているトラック部分を独自にコピーします。この方法で、Melodyneは音の検出と表示に必要なオーディオデータを取得します。転送はMelodyneの使用を非常に効果的なものにしますが、リアルタイムプラグインインターフェースの制限を克服する方法は他にありません。
もちろん、例外もあります。MelodyneをDAWで簡単に使用できるよう、ARAプラグインインターフェース拡張を開発しました。ARA対応のDAWは、使用するオーディオファイルに関してMelodyneが必要とする情報をMelodyneに提供し、Melodyneでの編集用にすぐさまトラックを開くことが可能です。つまり、転送の手順を経る必要がありません。これは、MelodyneをDAWで使用する最も便利な方法です。
ご使用のDAWがARAに対応している場合、次のパラグラフを除いて、残りのツアーをお読みいただく必要はありません。ヘルプセンターでご使用のDAWを検索すれば、ARA対応のDAWでのARA活用方法の詳細をご覧いただけます。
以下の説明は、ARAを使用するかしないかに関係なく、Melodyneが関係するあらゆるシナリオに当てはまります。Melodyneが必要とするメモリの量は、Melodyneに転送またはロードするファイルの長さによっても決まりますが、主には含まれるノートの数により決まります。ファイルに含まれるノートが多いほど、検出処理にかかる時間は長くなり、必要なメモリは多くなります。明確なルールを示すのは困難ですが、一般的に、ファイルが1時間より長いと、検出処理が遅くなります。ファイルが2時間を超えると、メモリ不足によりロードや転送が不可能な場合があります。このような場合、ファイルを分割してから、Melodyneで編集が必要な部分のみを転送またはロードしてください。
オーディオをMelodyneプラグインへ転送する
ご使用のDAWで、編集したいプロジェクトを開きます。
Melodyneプラグインを、編集したい素材が含まれているオーディオトラックにロードします。 Melodyneプラグインは、そのトラックに使用されているエフェクトチェーンの先頭(最初のスロット)に置きます。 最良の分析結果を得るには、できるだけドライ(未処理)でクリーンな入力信号をMelodyneに供給する必要があるためです。
DAWの再生カーソルを、Melodyneで編集したいパッセージの先頭より前に移動します。
Melodyneウィンドウ左上の[転送]ボタンをクリックし、転送の準備を整えます。
DAWで素材の再生を開始すると、Melodyneはインポートを自動的に開始します。編集したいパッセージの終わりに到達したら、再生を停止します。DAWの再生を停止すると、Melodyneの転送状態が自動的に解除されます。転送中に[転送]ボタンを押して転送を中断することもできます。
DAWトラックから別の部分のパッセージを続けて転送することもできます。DAWの再生中に[転送]ボタンをクリックすると、Melodyneの転送機能のオンとオフを切り替えることができ、再生の進行に従ってパンチインおよびパンチアウトすることができます。また、転送したいパッセージの終了部分に近づいたらDAWの再生を停止し、次のパッセージの開始部分へジャンプしてから再びMelodyneの転送機能をオンにし、またDAWの再生を再開し、次々に転送していくこともできます。トラック全体をMelodyneに転送したり、複数のトラックを複数のMelodyneインスタンスへ同時に転送することもできます。これを行うには、素材を同時に転送したいすべてのインスタンスの[転送]ボタンを有効にします。
重要: DAWプロジェクトにテンポまたは拍子記号の変更が含まれている場合、ツアー「DAWのテンポ変更に合わせる」をご参照ください。
ヒント:転送前に調を初期化: モノフォニックまたはポリフォニックなオーディオ素材では、Melodyneは調も検出します。しかし、短いメロディフレーズの場合、正しい検出を行うために必要な音符が足りず、検出される調が実際の調とは異なる場合があります。これを防ぐには、オーディオファイルを転送またはロードする_前_に、Melodyneプラグインの空のインスタンスまたは(スタンドアロンでご使用の場合)空のドキュメントに音階ルーラーを使用して調を設定します。これを行うには、音階ルーラー内で希望の主音をクリックし、コンテキストメニューから希望の音階を選択します。これで、Melodyneはこれ以降の分析結果に関係なく、この初期化された値を維持します。
再生範囲
転送後、これらのパッセージを再生すると、パッセージ部分はMelodyneによって再生されます。 残りの部分はDAWによって再生されます。 つまり、編集する素材部分は、Melodyneの信号が元のトラックの信号に差し替えられて再生されます。
[オプション]>[ノートエディター]サブメニューから、[再生範囲を表示]を選択します。(DAWではなく)Melodyneによって再生されるリージョンがタイムルーラーに表示されます。このリージョンは、マウスで枠をドラッグして拡張することができます。
リージョンを縮小するには、いくつかのノートを削除し、タイムルーラーのコンテキストメニューから[再生範囲をノートに合わせる]を選択します。このコマンドは再生範囲の境界でだけでなく範囲からノートを削除する際にも機能します(下図参照)。