DAWの可変テンポ

通常、DAWとMelodyneプラグインのタイムルーラーは常に同期した状態を保ちます。しかし、Melodyneに転送された2つのパッセージの間でDAW側にテンポ変更がある場合、またはDAWで全体のテンポを変更した場合は、Melodyneとホストアプリケーションのタイムルーラーが一致するよう、Melodyneにテンポ変更について知らせる必要があります。

新しい一定のテンポ

DAW内のテンポ変更が見つかると、Melodyne editorのテンポ表示の横のボタンが点滅します。ここで何の手段も講じなければ、DAWのタイムルーラーとMelodyne Pluginのタイムルーラーが一致しなくなります。

ボタンをクリックし、テンポダイアログを開きます。このウィンドウでは、ホストアプリケーションとMelodyneのタイムルーラーが一致するよう、テンポ変更の種類を指定することができます。

ソング全体のテンポが変更されているだけで、ソング内に複数のテンポ変更が存在しない場合、[一定のテンポ]を選択します。新しいテンポがソング全体に適用されていることがMelodyneへと伝えられ、Melodyneのタイムルーラーが新しいテンポに合わせられます。

Melodyneが新しいテンポに合わせてオーディオ素材をタイムストレッチまたはタイムコンプレッションするよう設定するには、[オーディオをストレッチ]チェックボックスを選択します。

このオプションを選択すると、Melodyneは、新しいテンポに合わせて素材をタイムストレッチ(またはタイムコンプレッション)します。DAWがDAW自体のオーディオ素材をタイムストレッチするとき、このチェックボックスが選択されていれば、Melodyneはホストと同じように動作し、DAWの素材とプラグインの素材の同期が保たれます。

テンポ変更が生じてもDAWがタイムストレッチを行わず、オーディオ素材に合わせてグリッドを変更するだけの場合、Melodyneでも同じ動作がおこなわれるよう、このチェックボックスの選択を解除してください。もちろん、このような場合であっても、DAWができない操作をMelodyneで行う(タイムストレッチで新しいテンポに合わせてオーディオ素材を調整する)目的でチェックボックスを選択しておいてもかまいません。

新しい可変テンポ

DAWで一定のテンポが選択されておらず、(突然またはゆっくりとした)内部テンポ変更が登場した場合、[可変テンポ]を選択します。

Melodyneは、テンポ変更を認識しその変更を正確に適用することができますが、そのためには、テンポ変更が起こるパッセージをあらかじめMelodyneに転送しておく必要があります。テンポ変更が、Melodyneへ転送された2つのパッセージの間で起こっている場合、Melodyneはそれに対処することができません。

このようなテンポ変更をMelodyneに伝える最もシンプルな方法は、DAWで小節1からプロジェクト末尾までのスタンダードMIDIファイルを保存し、[テンポ]ダイアログの[インポート]ボタンを使用してロードすることです。これで、DAWプロジェクト内のテンポ変更についてMelodyneが必要とするすべてのインスタンスに情報が提供されます。2つのタイムルーラーの同期も守られます。

もうひとつの方法は、テンポ変更を含むパッセージをMelodyneで通して再生し、テンポの進行をMelodyneに覚えさせることです。Melodyneの1インスタンスにパッセージを再生すると、他のインスタンスにもテンポ変更の情報が自動認識されます。

これは以下の手順で行います(次のセクションもお読みください)。

  • テンポダイアログを開き、DAWの再生を停止し、最初のテンポ変更より1小節ほど前のタイムライン上の位置に再生カーソルを移動させます。
  • 次に、テンポ変更を終わりまで含み、一定のテンポが少なくとも1小節続くところまで、パッセージを再生します。
  • DAWの再生を停止します。テンポダイアログに、パッセージ内のテンポ変更が表示されます。ここに表示されるテンポは、[テンポ]フィールドに表示されるものより正確です。2つの値にわずかな違いがあっても心配はありません。

注:一部のDAW(現在のところCubaseのみ)では、テンポの変更情報をMelodyneに常時認識させることができます。このような場合、Melodyneは必要な情報を取得しているため、パッセージ内の最大テンポと最小テンポはテンポダイアログを開くと自動表示され、パッセージを通して再生する必要はありません。[OK]をクリックしてダイアログを閉じます。

テンポの変更に合わせてオーディオ素材自体をタイムストレッチまたはタイムコンプレッションするのか、単にグリッドを変更させるだけなのかを指定します。

[OK]で設定内容を確定し、[キャンセル]で取り消します。Melodyneへとテンポ変更を転送するためにDAWをスタートしてから停止するまで、[OK]ボタンは灰色表示のままとなります。

可変テンポを操作する場合の注意

Melodyneにテンポまたは拍子記号の変更が完全に伝えられていない場合、DAWとMelodyneのタイムルーラーの同期が切れ、転送された部分が正しくない時間位置で聞こえたり、正しくない場所が録音されたりすることがあります。

可変テンポの操作は、残念ながら一目瞭然というわけにはいきません。DAWがテンポや拍子記号の変更に関するすべての情報をプラグインへ伝送するのであれば簡単なのですが、現在のプラグインインターフェースではこういった情報は提供されません。そのため、Melodyneは関連するすべての情報を転送される素材から取得する必要があります。しかし、普通は楽曲全体にわたって転送することはありません。そのため、テンポダイアログでMelodyneが再生中にテンポと拍子記号の変更を分析できるようにします。Melodyneのテンポ分析については、以下のルールを守れば、予想どおりの結果が得られ、可変テンポも問題なく操作できるはずです。

  • 初めて転送する前に、テンポダイアログを開いた状態で、テンポの変更または拍子記号の変更を含むパッセージ すべて を含むソング 全体 を、ひとつのMelodyneインスタンスに対して再生します。こうすることで、Melodyneがテンポマップを作成することができ、これがMelodyneのすべてのインスタンスに適用されます。また、[インポート]キーを使用して、DAWからエクスポートした、必要なテンポデータを含むスタンダードMIDIファイルをロードすることもできます。不確かな場合は、すばやく処理可能なこちらの方法を使用するとよいでしょう。
  • DAWでテンポをさらに変更した場合、ソング 全体 をテンポダイアログのMelodyneのひとつのインスタンスに対してもう一度再生します。こうすることで、Melodyneはすべてのテンポ変更を登録しタイムルーラーの同期を保つことができます。
  • DAWでテンポを変更する にMelodyneに転送し、その後でMelodyneがテンポ変更を学習した場合、テンポダイアログの[オーディオをストレッチ]チェックボックスを選択します。すでに転送された部分を新しいテンポ環境に適応させるには、この方法しかありません。